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農業に従事する外国人を採用する方法は?ビザの種類別にポイントを紹介


26 Apr, 2021

日本の農業の存続には外国人労働者の力が必要

日本では少子高齢化による労働力不足が問題となっていますが、特に深刻な業種の一つとして「農業」があります。

農林水産省の調べによると、2020年時点における農業従事者の平均年齢は67.8歳(概数値)であり、65歳以上の従事者が多くを占めている状況です。

日本国内の農業を存続させていくためには、若い世代が農業に従事することが急務といえます。しかしながら、農業は大変なイメージが根強いこともあり、若い世代の農業従事者を増やすことは大きな課題となっています。

日本の農業を存続させていくための抜本的な対策としては「外国人労働者」の採用があります。この記事では農業に従事する外国籍人材を採用する場合に知っておきたい知識を紹介していきます。

外国人の就農ビザは3種類

外国人が農業に従事するにあたって必要となるビザは以下の3種類です。

・特定活動ビザ

・技能実習ビザ

・特定技能ビザ

それぞれのビザについて説明します。

特定活動ビザ

特定活動ビザは、在留資格が「特定活動」の場合に交付されるビザです。特定活動は「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」と定められています。

農業に関する特定活動としては「国家戦略特区農業支援外国人受入事業」があります。同事業は、国が定めた国家戦略特別区域内において、国内における強い農業を実現するために実施しているものです。

この事業を行っている場合は、特定活動ビザで外国人労働者を農業に従事させることができます。

在留期間は最長で通算3年間であり、期間内は帰国や再入国が可能です。

技能実習ビザ

技能実習ビザは、外国人技能実習生を受け入れるために設けられたビザで、在留資格が「技能実習」の場合に交付されます。外国人が来日して技能や技術、知識を習得し、それらの技能や知識を自国で活かしてもらうことを目的としています。

農業分野で働く外国人は増加傾向にありますが、その多くは技能実習ビザを保有しています。在留期間は最長5年です。なお、実習として来日しているため期間中は原則として帰国できません。

特定技能ビザ

特定技能ビザは、在留資格が「特定技能」の場合に交付されるビザで、建設業や介護業、農業など14の業種に従事することが認められています。

特定技能の在留資格が設けられたのは2019年のことで、新しい在留資格といえます。この在留資格が設けられた背景は日本国内の労働力不足に対応するためです。

農業の分野において外国人労働者を雇用する場合、特定技能の在留資格が設けられる前は、技能実習の在留資格を持つ外国人か、留学生、または家族滞在者のうち「資格外活動許可」を得ている人に限られていました。

しかしながら、そのような状況では労働力不足が根本的に解消しなかったことから、労働力不足の解消を目指して特定技能の在留資格が設けられました。

ビザを取得するための条件は?

ビザを取得するための条件について、在留資格別にみていきます。

特定活動

・在留期間:通算で3年(期間内に帰国が可能)

・技能水準:一定の専門性や技能が必要(試験で確認)

・日本語能力:農業を行うために必要な日本語能力を有していること(試験で確認)

技能実習

・在留期間:最長5年(期間中は原則として帰国不可)

・技能水準:特になし

・日本語能力:特になし

特定技能

特定技能の在留資格は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類がありますが、農業分野に従事する場合は「特定技能1号」となります。また、特定技能1号の場合は家族と一緒に日本で暮らすことが認められていません。

特定技能1号の在留資格者として農業で働くためには、以下の条件が必要となります。

・在留期間:通算で5年(期間内に帰国が可能)

・技能水準:農業技能測定試験に合格していること

・日本語能力:日本語能力テスト、または日本語能力試験に合格していること

在留資格が特定活動と特定技能の場合は、技能水準と日本語能力に一定の条件が定められています。しかし、技能実習の場合は技能水準と日本語能力については特に条件が定められていません。

しかしながら、日本語がある程度使えないとコミュニケーションが取れず、作業に支障が生じかねないので、必要に応じて日本語の研修を実施しましょう。

ビザを取得するうえで基準、注意点は?

ビザを取得する場合の注意点について、外国人の立場でみた場合の注意点、雇用する側からみた場合の注意点について説明します。

外国人の立場からみた場合

18歳以上で健康状態が良好であり、パスポートを所有していることが原則となります。

また、農業に従事する場合は、農業に関する基本的な知識を持っていること、作業中にコミュニケーションを取れる程度の日本語能力も必要です。農業の知識と日本語能力に関しては試験などで客観的に判定されている必要があります。

雇用する側からみた場合の注意点

ビザの取得に関しては、外国人が一定の条件を満たしているだけでなく、雇用する企業側も一定の条件を満たしている必要があります。

主な条件は以下の通りです。

・日頃から法令を守って業務にあたっていること

・労働時間、給与、教育、福利厚生などについて差別を行わず、日本人と同等の条件とすること

外国人が働きやすい環境を維持している企業であればビザの取得が認められやすいですが、働きにくい環境であるとみなされた場合は、ビザの取得が認められない原因となる場合があります。

ビザ取得の手続きは、上記の条件を満たしたうえで行いましょう。

工夫しだいで10年後も就農が可能!その方法は?

特定技能の在留期間は通算5年であるため、一見すると5年を超えて就農することはできないように感じられます。

ここで着目したい点は、特定技能の在留期間が「通算」5年である点です。10年間にわたって就農するなら、毎年半年間だけ就農する方法があります。これによって、日本に滞在する期間は通算5年となります。

農業の特徴的な点は、春から夏、秋にかけては忙しい反面、秋から冬、春にかけては作業量が少なくなります。つまり、春から秋にかけての半年間だけ日本で農業を行い、残りの半年間は自国に帰国して稼ぐという方法でも差し支えありません。

この方法によって、10年間にわたって日本で農業を行うことが可能となります。

在留資格別 従事できる仕事の内容は?

従事できる仕事の内容を在留資格別にまとめました。

特定活動

・農作業全般

なお、全体の半分以下の時間内であれば、農畜産物の製造・加工、運搬、販売も可能

技能実習

・実習1年目は農作業全般が可能

・実習2年目以降は、耕種農業のうち「施設園芸」「畑作・野菜」「果樹」、あるいは畜産農業のうち「養豚」「養鶏」「酪農」の実習が可能

なお、実習時間全体の半分以下の時間であれば、農畜産物の製造・加工実習が可能

特定技能

耕種農業全般、あるいは畜産農業全般のいずれかに従事可能

ほかにも!農業従事可能な条件別在留資格

農業に従事できる在留資格は「特定活動」「技能実習」「特定技能」であることを説明しました。

なお、これらの在留資格以外であっても農業に従事可能な在留資格があります。それは「身分または地位に基づく在留資格」の保有者、もしくは、留学生や家族滞在者などの在留資格を持ち、資格外活動許可を得ている人です。

身分または地位に基づく在留資格は、通称「身分系ビザ」と呼ばれており、資格の種類としては「定住者」「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」があります。

身分または地位に基づく在留資格を保有していれば就労制限なく働くことが可能であるため、農業に従事できます。

ただし、留学生や家族滞在者などの在留資格を持ち、資格外活動許可を得ている人を雇用する場合、1週間の労働時間が28時間以内に制限される点について理解しておきましょう。

外国人農業従事者の雇用形態

特定技能の在留資格を保有している場合、原則として直接雇用となります。直接雇用とは、仕事をする会社と直接労働契約を締結することです。なお、直接契約以外の方法としては、派遣会社と労働契約を締結する派遣契約があります。

また、特定技能の在留資格を持つ外国人を直接雇用する場合は、フルタイムで雇用すること、給与や福利厚生に関しては日本人と同等とすることが求められます。

ただし、農業に関しては派遣契約が認められています。その理由は、農作業には農閑期があり、年間を通して作業量が一定ではないためです。春から秋にかけては作業量が増えるものの、秋から翌年の春までは作業量が減ってしまいます。

そのような状態では、雇う側としては毎月一定の給料を支払い続けることが難しいため、直接雇用と派遣契約の両方が認められているのです。

農業に従事する外国人の採用に関する今後の動向

農業経営における労働力不足の状況は一段と深刻さを増している状況です。厚生労働省がまとめた「職業安定業務統計」によると、農業の有効求人倍率は、全職業の有効求人倍率の平均値と比べると常に上回っている状態が続いています。

若年層の人口は年々減少している状況にあるため、労働者の確保は難しい状況といえます。そのような状況を打開するためには外国人労働者の採用が有効といえるでしょう。

2019年からは在留資格に「特定技能」が追加され、農業の分野においても外国人を採用しやすい状況となりました。労働力人口の減少は今後も続くことから、外国人労働者の採用は今以上に活発化するものと見込まれます。

まとめ

農業従事者の減少を食い止める手段としては外国人の採用が有効です。なお、外国人を採用する場合は在留資格をあらかじめ確認しておくことがポイントとなります。在留資格を確認せずに採用してしまうと、不法就労とみなされてしまう場合があるため注意が必要です。

また、外国人労働者に長期間勤めてもらうためには、働きやすい環境づくりや雰囲気づくりも重要といえます。農業は体力勝負の労働といえますが、作業の段取りの工夫や効率化を進めていくことも働きやすい環境づくりにつながります。

(画像はUnsplashより)